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NOM (Natural Organic Matter)水道および環境工学の分野で広く用いられる概念であり天然に存在する有機物の総称を指します。これらの有機物は土壌や河川や湖沼や海洋や植物や微生物や動植物の残骸など自然環境から由来します。浄水場では原水の状態を把握するうえで重要な考え方となり水道水の水質評価や処理工程の設計や運用や環境への影響確認に深く関わります。ふだん家庭でこの名称を意識する場面は多くありませんが雨の後に原水の色やにおいが変わりやすい時期や浄水処理の負荷が上がる時にはNOMの影響が背景にあることがあります。見た目だけでは分かりにくい成分も多いため水の色や透明感やにおいの変化を総合的に見て判断することが大切です。
1.NOMの特性
a.複雑な組成
多様な有機化合物から構成されており組成は非常に複雑です。これにはヒュム酸やフルボ酸やタンニンやアミノ酸や脂質やたんぱく質などが含まれます。流域の土壌や植物の量や季節の変化によって中身が変わるため同じ河川でも時期によって性質が変わることがあります。浄水処理の現場では一つの成分だけを見ればよいわけではなく色や溶けやすさや反応しやすさを総合的に見て処理方法を考える必要があります。
b.光学特性
特定の波長の光を吸収または散乱する性質があり水の色や透明度へ影響を与えます。原水が黄褐色に見えたり透明度が下がって見えたりする時はNOMが関係している場合があります。とくに大雨の後や落ち葉が多い時期は流入量が増えやすく見た目の変化として表れやすくなります。家庭で水の色に違和感を覚えた時も原因が配管のさびなのか原水由来の成分なのかを切り分ける視点が大切です。
c.安定性
一部のNOMは微生物による分解が進みにくく環境中で比較的長く残る性質を持ちます。そのため一時的に流れ込んだだけではなく長期間にわたり水質へ影響することがあります。浄水処理では短時間で完全に変化させにくい成分もあるため凝集やろ過や活性炭など複数の工程を組み合わせて対応することがあります。安定しているからこそ管理の難しさがあり原水監視の継続が重要になります。
d.影響要因
濃度や組成は地域や季節や土壌の特性や植生や流域の利用状況によって影響を受けます。森林が多い流域と市街地に近い流域では由来する有機物の傾向が異なりますし渇水時と雨天時でも水中へ入る量に差が出ます。現場では気候や周辺環境の変化を見ながら原水の状態を把握することが必要です。ふだん問題が少ない地域でも強い雨の後だけ色やにおいの管理が難しくなることがあります。
2.NOMの影響
a.浄水プロセスへの影響
浄水処理では重要な対象の一つであり複雑な組成と特性から処理効率へ影響を与えます。凝集剤の効き方やろ過の負荷や活性炭の寿命に関わることがあり原水中の量が増えると処理工程の調整が必要になります。見分け方としては原水の色の変化や処理後水質の管理値の変動から把握されることが多く家庭の蛇口で直接判断するものではありません。ただし水道水の色や味やにおいに継続した変化がある時は背景要因の一つとして考えられることがあります。
b.消毒副生成物の形成
消毒剤と反応することでトリハロメタンなどの消毒副生成物が発生する可能性があります。これは浄水場で消毒を行う際に注意される点でありNOMが多いほど反応の機会が増えやすくなります。そのため処理の順序や薬品の使い方や接触時間の調整が重要になります。家庭で直接対応するものではありませんが水道事業では安全な飲用水を保つために厳しく管理されています。
c.水質への影響
水の色や味やにおいなどの外観的特性に影響を与え水道水の印象や使いやすさへ関わります。濃度が高いと着色感や土っぽい印象や古い水のような違和感につながることがあります。ただし家庭内で感じる異臭や濁りは給水管の劣化や受水槽の管理不足が原因のこともあるためNOMだけで決めつけないことが大切です。しばらく流しても色やにおいが改善しない時は建物内設備の確認も必要になります。
d.環境への影響
河川や湖沼への流入が増加すると水質の変化や生態系への影響が懸念されます。日射の届き方や溶存酸素の状態や微生物の働きにも関わるため水域管理の観点でも無視できません。流域の環境が変わると原水の質も変わり結果として浄水処理の難しさにもつながります。水道の現場では原水の保全と浄水処理を切り離さずに考えることが重要です。
3.NOMの管理と低減策
a.効果的な浄水処理
適切な処理工程や処理剤の選択により除去効率を高めることが重要です。凝集沈殿やろ過や活性炭処理などを原水の状態に合わせて組み合わせることで水質の安定化が図られます。雨の後や季節の変わり目は原水の性質が変わりやすいため普段と同じ運転だけでは十分でない場合があります。現場では検査結果を見ながらきめ細かな調整を行うことが大切です。
b.適切な消毒剤の選択
消毒においては反応による副生成物の発生を抑えながら必要な殺菌効果を確保することが求められます。そのため原水や処理水の状態に応じて消毒方法や投入量の考え方を整える必要があります。消毒を強めればよいという単純なものではなく安全性と処理効率の両方を見ながら管理することが重要です。
c.水域管理と保護
地域全体の水質管理や土壌保護や適切な排水管理が環境への影響を低減するうえで重要です。上流の自然環境や周辺土地利用の変化は原水の質へ直接つながるため浄水場の中だけで完結する問題ではありません。流域全体の保全が進むことで浄水処理の負担を抑えやすくなり安定した水道水の供給にもつながります。
NOMの理解と適切な管理は安全で清潔な飲用水の供給や環境保護に向けた取り組みの一環として大切です。水質の維持と向上を図り持続可能な水循環を保つためには原水の変化を見逃さず処理方法を適切に選ぶ必要があります。家庭でできる見分け方としては朝一番の水だけでなくしばらく流した後も色やにおいが続くかを確かめることが参考になります。短時間で改善する場合は宅内配管や滞留水の影響も考えられますが改善しない場合は建物設備や地域の給水状況の確認が必要です。初期対応としては飲用前にしばらく通水して様子を見ることや受水槽方式の建物では管理会社へ状態を伝えることが役立ちます。水の黄ばみやにおいが継続する時や複数の蛇口で同じ変化が出る時や配管のさびと区別しにくい時は水道業者や管理者へ相談する目安になります。原因を決めつけず原水由来なのか宅内設備由来なのかを切り分けて確認することが安全な水の利用につながります。
